築地本願寺から学ぶひとり税理士としての方向性
築地本願寺代表役員・宗務長である安永雄彦さんが書かれた「築地本願寺の経営学」を読みました。
著者の安永雄彦さんは、2019年と2020年にカンブリア宮殿でも取り上げられているようでご存じの方も多いと思います。
これから「ひとり税理士」として独立予定のわたしにとって、参考にしたい部分がたくさんあったのでまとめておきたいと思います。
お寺と税理士
少子高齢化、核家族化、価値観の変化により、寺の約3割が20年後にはなくなるといわれているそうです。
税理士もAIやRPAの普及により淘汰されていくといわれています。
確かに、AIやRPAを活用しつつ効率化をし、付加価値の高いものを提供していかなければ淘汰されていくだろうことは想像がつきます。
とはいっても税理士不要にはならないと思っています。
個人の確定申告書を自分でつくることは可能ですが、法人の申告書は複雑で自分でつくることは至難の技です。
(相当頑張ったらつくれるかもしれませんが、そこに労力を使うなら本業に注力すべきと思います。)
また、複雑で毎年変わる税制を自分でキャッチし正しく理解することも難しいでしょう。
AIやRPAによって効率化はされるので、記帳代行の需要は減るでしょうが、税理士自体は必要とされ続けるものと考えています。
では必要とされ続ける税理士になるためには具体的になにをすればいいのか?
築地本願寺から学べる事
情報発信して、とっつきやすくする
築地本願寺さんは、お寺としては普通しないことをたくさんしています。
ざっとあげると、次のとおり。
- デザイナーに頼んでの境内改修
- インスタ映えするカフェ
- ライブ開催
- 無料コンサート
- 結婚相談所
- サロン(カルチャーセンターのようなもの。ヨガや太極拳が人気。)
- よろず僧談
- YouTube
お寺といえば、普通はお葬式や法要のときだけで、普段、接点はありません。
築地本願寺さんの場合は、カフェをつくったり、結婚相談所を開いたり、YouTubeで情報発信をするなどして、普段から多くの人にお寺と接点をもってもらうように努力しています。
お寺ってどうしても敷居が高く感じるものなんですが、こうやってたくさん情報発信してくれたり触れる機会があると、確かにとっつきやすくなります。
(カフェはわたしも行ったことありますし。)
税理士も「とっつきにくくて敷居が高い」というイメージが強いようです。
実際には、わたしにように、どちらかというと謙虚(じぶんでいうのもなんですが・・・)で恐くない人でも、税理士というだけで「偉そう・上から目線なのでは?」と思われたりします。
今わたしの情報発信はこのブログだけなのですが、来年独立したらホームページも立ち上げます。
これらの情報発信により、偉そうでも上から目線でもないことは知ってもらえるのかな、なんて思っています。
情報発信をたくさんして普段から接点を増やすこと、敷居を低くしてとっつきやすくしておくことは、税理士にも有効、と思います。
専門家とのハブをつくる
築地本願寺さんは、
「お寺をコミュニティの中心にすること」
「エンディング期のワンストップ拠点化」
を目指しているそうです。
仏教ですべてが解決できるわけではないので、お寺で解決できないことは信用できる専門家につなげていく、というこころみをしているとのこと。
道半ばのようですが、すでに、
- 精神科医と提携して個別カウンセリング
- 保険会社とコラボして救急医療に対応
- 新聞社とコラボして自分史を書籍化
などが実現しているそうです。
「コミュニティの中心」「ワンストップ化」は、税理士にすごくマッチするな、と感じます。
会社をつくろうと思ってまず思い浮かべる専門家は税理士です。
でも、登記申請をするには司法書士にお願いしなければなりませんし、社保・雇用保険の各種手続きは社労士にお願いすることになります。
業種あるいは状況によっては弁護士も必要になるでしょう。
これらの専門家をすべてじぶんでさがすとなると大変です。
税理士が信頼できる専門家とのパイプを持っておいて、ワンストップでサービス提供できれば需要は高いです。(実際に各種専門家と提携している税理士は多いです。)
とりあえず税理士に相談してみよう、と思われるように信頼関係を築いておくことも重要です。
仏教ですべてが解決できないように、税理士もすべてを解決することはできません。
専門外のことを聞かれることも多々あります(特に労務関係)ので、軽々しく答えないよう、また、無下にもしないよう、ハブになることでお客様のお役に立つという方法がベターと考えます。
IT、オンラインの活用
築地本願寺さんは、IT・オンラインを活用しています。
本より前に2020年のカンブリア宮殿を見てITを駆使していることは知っていましたが、
その行動力がすごいな、とあらためて感じます。
- オンライン法要
- YouTube配信
- 宗務員全員にノートPCを支給
- 会議はペーパーレス
- お賽銭のキャッシュレス化
著者の安永さんは
「仏様への信仰も大切な人への思いも、本来、かたちがない概念だから形式にとらわれる必要は無い。」
「センターの充実や情報発信により人とお寺の確固たるつながりがあれば、場所も建物もいらない。」
と考えていらっしゃいます。
すごい考え方だと思います。
オンライン法要もキャッシュレス化も一定の反対意見はありますが、認められつつあるように感じます。
わたし自身、はじめにオンライン法要やお賽銭のキャッシュレス化を聞いた時には違和感と抵抗感がありました。
でも、段々とその意識は薄れてきているように感じます。
安永さんのおっしゃられているように、「思いは本来かたちのないもの」であることを思えばオンラインであること・キャッシュレスであることに問題はないのだろうと思います。
無理強いする必要は無いので、対面がいい方は対面のまま、オンラインがいい方はオンラインを選択すればいいだけのことです。
税理士も場所にとらわれず、どこでも対応できます。
従来は多くの場合訪問ありきでしたが、コロナによりメールやオンラインでの対応が増え、訪問せずとも支障がないことが浮き彫りになりました。
今の勤務先では、古くからのお客様は対面に戻っているところが多いですが、新しいお客様はオンライン対応のままという方も多いです。
対面は、こちらが行ったり事務所に来てもらったりするので、どちらかの移動時間が犠牲になってしまいます。オンライン対応のが効率はいいです。
ただ、税理士側だけの意見で決められるものではないので、お客様の希望に沿えるよう、築地本願寺さんのように、オンラインにも対面にも対応できるようにはすべきでしょう。
まとめ
安永さんの実行力はすごい、と感じます。
「一つひとつの実行プロセスを見てみると、単純で当たり前のことです。しかし、周りの人を巻き込みながらやり通すのは本当に難しい。」
とおっしゃられています。
一般社会であっても新しいことをするのは大変ですから、お寺という特殊な世界ではなおさらだと思います。
その点「ひとり税理士」の場合は、反対する上司も部下もいないので、実行はしやすいです。
独立にあたっては、主に「ひとり税理士」の先輩方のセミナーを受けたり、著書を読んだり、ブログを読んだりして参考にしています。
しかし、異業種からも学べることはたくさんあるなと感じます。
(同業だと直接的過ぎるので、考え方やものごとへの取り組み方などは異業種の方が素直に受け入れられる場合もあります。)
これからも、業種にかかわらず、色んな人や組織の考え方・ものごとへの取り組み方を学んでいきたいと思います。