北欧型福祉モデル

福祉事業×お金儲け=幸せ

野田 直裕さん著「なぜ幸福度世界一の北欧型福祉モデルが人生を豊かにするのか?安定した収益を得ながら、みんなが幸せになる方法」を読みました。

著者の野田さんは、愛知県半田市でグループホームを5棟経営されています。

元々は、アパレル、デザイナー、不動産関係など福祉とは全く関係のない仕事をされていましたが、2018年12月49才で障がい者向けグループホーム運営会社を設立されたとのこと。

本の表紙には、

・時間とお金にゆとりができる
・仕事で社会に貢献できる

と書かれています。

福祉事業って、社会貢献はできるでしょうけど、お金にならない・ゆとりなんてもてないというイメージがあるなか、福祉事業を商売として真っ正面からとらえつつ、じぶん・スタッフ・利用者の幸せも実現させていて素敵だなと思いました。

わたしは野田さんと同じ愛知県(岡崎市)出身なので、「想い」を持った方がちゃんと「お金儲け」をしている姿を知って嬉しくなりました。

福祉事業はビジネスチャンス

後述しますが、野田さんは「想い」を抱えてグループホームをたちあげました。

しかし「想い」だけでは行動されなかった、そこにビジネチャンスを見いだしたからこそ行動したのだと思います。

下記、野田さんの考えた障がい者向けグループホームのビジネスチャンス。

  • 保険で9割回収できるので回収漏れリスクがない。
  • 障害者差別解消法が2016年に施行され、近隣への住民説明会が必須ではなくなり、参入しやすくなった。
  • 参入しやすくなったとはいえ、障がい者向けの福祉事業なんて、社会福祉法人や医療法人がやるものだという認識があるからライバルが少ない。
  • 増え続ける障がい者を増え続ける空き家で受け入れるという時代に合った事業。

このように福祉をビジネスととらえることにわたしはなんの違和感もないんですが、抵抗をもたれる方も多いようです。

(約3割が高齢者という超高齢社会ですし、精神を病む人の数も年々増えているなか、福祉をビジネスチャンスととらえることは当然の成り行きだと思うんですが、心情的に認めたくない方も一定数いるようで。)

スタッフの幸せ→良いサービス→利用者さんの回復

野田さんは「スタッフの幸せ→良いサービス→利用者さんの回復」を明確に頭に描かれた上で経営されています。

現状(日本型)の福祉は、長時間労働・低賃金です。

一方野田さんの施設(北欧型)は、短時間労働・高賃金。

お給料をあげても、スタッフが疲弊していないから効率的に仕事ができるし、離職率が低いので求人に余分なお金や手間がかからないことから利益はちゃんと残るといいます。

そして、スタッフの満足度が上がると、いいサービスが提供できて、結果、利用者の満足度・回復力も高くなる、と。

この考えを実現できるようになるまでに大変な苦労をされていますが、人を雇うのであれば、業種に関わらず誰でもこの考えは見習うべきと思います。

これまでたくさんの経営者の方とお会いしてきましたし、自分もいくつかの会社で働いてきましたが、スタッフの犠牲と我慢のもとに成り立つビジネスは悪ですらある、と感じています。

スタッフの道徳心、向上心を利用して成り立つビジネスなどそもそもやるべきではないし、どうしてもやりたいことであれば人を雇わない選択をすべき、と思います。

「想い」も必要

野田さんは甥っ子さんが障害を抱えており、妹さん夫婦やご自身の両親が苦労してきた姿を見てきたことがグループホーム設立の大きなきっかけだったそうです。

福祉は単純にお金持ちになりたいからという理由だけでは難しい分野だと思います。

野田さんのように身近に困ってる人がいなくても、こういう社会にしたい、こういう人の支えになりたい、サポートをしたい、などビジネスチャンス以外にも「想い」がなければ継続は難しい分野だと感じます。

お金儲けはもちろん大切(会社が潰れてしまっては元も子もない。)ですが、利用者さんが回復して社会復帰されることにも喜びを感じられる人でなければ難しい。

野田さんは、この事業はお金だけ出して人に丸投げではできないものだと考えているから、経営するだけでなく現場にもたつそうです。

「想い」は確かに伝わります。特にスタッフには。

経営者の「想い」が理解できて待遇も良ければスタッフの満足度は高まります。

結果、良いサービス提供ができ、利用者さんの満足度・回復力が高まる。

野田さんのグループホームに来た利用者さんは、心が安定して、普通の仕事ができるようになったり、就労継続支援A型と呼ばれる雇用契約の元に勧める就労支援に移れる方が多いそうです。

通常、障がい者施設では、改善して施設を出ていくということはまれで、ほとんどの方が施設に停滞するようですが、野田さんの施設では2割ほどの方は、状況が改善して出ていかれるとのこと。

普通は単純作業が多いけど、できる方には、会計など複雑なデータ入力や、オンラインショップ管理など、高度な仕事もしてもらうそうです。

単純作業だけだと、その人も自分に自信を取り戻せないし、社会からどんどん拒絶されているように感じてしまうからだそうです。

こういった部分はお金儲けというより、「想い」があるから実現できている部分なのかと感じます。

まとめ

野田さんは自分の想いを実現され、利益のでる会社をつくることに成功されました。

しかし、それを実現することはとっても難しいです。

(著書でも触れられていますが1棟目の最初の利用者さんの扱いがすごく大変で、スタッフのほとんどがすぐにやめてしまったそうです。)

「想い」を実現するために、自分も現場にたってその実現に取り組み続けた野田さんのバイタリティーはすごいです。

福祉でお金儲けをすることは悪いことでもなんでもない。

というか、より良いサービス提供のためにはちゃんと儲けて、会社を維持してもらわなくてはならない。

サービス提供者側(経営者やスタッフ)の心と生活が満たされていない状態では、良いサービスなど提供できません。

自分の生活がままならない状態で人のお世話なんてできるわけがないんですよね。

野田さんのように福祉事業でお金儲けをちゃんとして、多くの人が幸せになれる会社がたくさんできればいいな、と思います。