「持分なし医療法人」の交際費、実は損金不算入かも?
医療法人の交際費の損金算入額は
持分の定めの有無によって変わります。
株式会社と同じ感覚で損金算入させてしまうと、
実は損金算入しちゃいけなかった!なんてこともあり得ます。
誤った処理をしないよう気を付けましょう。
なお、持分の定めの有無については、
「『持分の定めのある医療法人』と『持分の定めのない医療法人』」
にまとめてありますので、そちらご参照ください。
交際費の損金算入額
まず初めに。
原則、交際費は損金算入されません。
根拠は以下の条文です。
租税特別措置法61条の4(交際費等の損金不算入)
法人が平成二十六年四月一日から令和六年三月三十一日までの間に開始する各事業年度(以下この条において「適用年度」という。)において支出する交際費等の額(当該適用年度終了の日における資本金の額又は出資金の額(資本又は出資を有しない法人その他政令で定める法人にあつては、政令で定める金額。以下この項及び次項において同じ。)が百億円以下である法人(通算法人の当該適用年度終了の日において当該通算法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人のうちいずれかの法人の同日における資本金の額又は出資金の額が百億円を超える場合における当該通算法人を除く。)については、当該交際費等の額のうち接待飲食費の額の百分の五十に相当する金額を超える部分の金額)は、当該適用年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
このように、原則、損金算入はされないんですが
資本金又は出資金の額に応じて、例外的に
一定金額までの損金算入が認められています。
資本金1億円以下の法人:800万円or接待飲食費50%までOK!
ずは、医療法人というくくりではなく、
一般的な法人(株式会社や合同会社など)
における交際費の取り扱いについて確認しておきます。
上記でご紹介した、租税特別措置法61条の4(交際費等の損金不算入)を
再掲しますが、下線の部分にあるように資本金100億円以下の
法人については接待飲食費の50%以下部分については損金算入が認められています。
租税特別措置法61条の4(交際費等の損金不算入)
法人が平成二十六年四月一日から令和六年三月三十一日までの間に開始する各事業年度(以下この条において「適用年度」という。)において支出する交際費等の額(当該適用年度終了の日における資本金の額又は出資金の額(資本又は出資を有しない法人その他政令で定める法人にあつては、政令で定める金額。以下この項及び次項において同じ。)が百億円以下である法人(通算法人の当該適用年度終了の日において当該通算法人との間に通算完全支配関係がある他の通算法人のうちいずれかの法人の同日における資本金の額又は出資金の額が百億円を超える場合における当該通算法人を除く。)については、当該交際費等の額のうち接待飲食費の額の百分の五十に相当する金額を超える部分の金額)は、当該適用年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
さらに、つづく2項において
租税特別措置法61条の4第2項(交際費等の損金不算入)
前項の場合において、法人(投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十二項に規定する投資法人及び資産の流動化に関する法律第二条第三項に規定する特定目的会社を除く。)のうち当該適用年度終了の日における資本金の額又は出資金の額が一億円以下であるもの(次に掲げる法人を除く。)については、前項の交際費等の額のうち定額控除限度額(八百万円に当該適用年度の月数を乗じてこれを十二で除して計算した金額をいう。)を超える部分の金額をもつて、同項に規定する超える部分の金額とすることができる。
と規定されており、
800万円以下の部分については
損金算入が認められています。
まとめると次のようになります。
資本金又は出資金が1億円以下の法人の交際費
①800万円
②飲食代の50%
①②のいずれか高い金額まで損金算入できる!
※資本金又は出資金の額が5億円以上の法人の100%子法人など
一定の法人は除くという例外規定はあります。
(一般的にあまり該当することはないと思いますが。)
資本金1億円超100億円以下の法人:接待飲食費50%までOK!
資本金が1億円を超えると
第2項の規定は適用されず第1項の括弧書き
部分のみが該当するので
接待飲食費の50%以下の部分だけが
損金算入額となります。
資本金又は出資金が1億円超100億円以下の法人の交際費
飲食代の50%まで損金算入できる!
資本金100億円超の法人:交際費は全額損金不算入!
資本金が100億円を超えると
第1項の括弧書きや第2項に該当しないので
原則通りに全額が損金不算入となります。
資本金又は出資金が100億円超の法人の交際費
全額損金不算入
出資金1億円以下の「持分あり医療法人」:800万円or接待飲食費50%までOK!
持分あり医療法人の出資金は、
その文言通り「資本金の額又は出資金の額」に
該当するので、株式会社や合同会社などと同じように
出資金の額により判定します。
よってつぎのようになります。
出資金1億円以下の「持分あり医療法人」の交際費
①800万円
②飲食代の50%
①②のいずれか高い金額まで損金算入できる!
※出資金1億円超についても判定は一般法人と同じです。
該当する医療法人は少ないと思うので省きます。
「持分なし医療法人」:基金に関係なく判定される!
「持分あり医療法人」はその出資金により
交際費の損金算入額が判定されますが
「持分なし医療法人」は「基金」であり、
資本金でも出資金でもありません。
このように資本金の額又は出資金の額がない場合には、
「資本金の額又は出資金の額に準ずるもの」
によりその判定を行うことになります。
具体的な計算方法については下記で定められています。
租税特別措置法施行令37条の4(資本金の額又は出資金の額に準ずるものの範囲等)
法第六十一条の四第一項に規定する政令で定める法人は、公益法人等、人格のない社団等及び外国法人とし、同項に規定する政令で定める金額は、次の各号に掲げる法人の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 資本又は出資を有しない法人(第三号から第五号までに掲げるものを除く。) 当該適用年度(法第六十一条の四第一項に規定する適用年度をいう。以下この条において同じ。)終了の日における貸借対照表(確定した決算に基づくものに限る。以下この項において同じ。)に計上されている総資産の帳簿価額から当該貸借対照表に計上されている総負債の帳簿価額を控除した金額(当該貸借対照表に、当該適用年度に係る利益の額が計上されているときは、その額を控除した金額とし、当該適用年度に係る欠損金の額が計上されているときは、その額を加算した金額とする。)の百分の六十に相当する金額
計算式は次の通り。
(総資産-総負債-当期純利益(損失の場合は損失額を+))×60%
これが1億円以下なら800万円規定が使え、
1億円超の場合は使えません。
まとめると次の通り。
(総資産-総負債-当期純利益(損失の場合は損失額を+))×60%≦1億円
①800万円
②飲食代の50%
①②のいずれか高い金額まで損金算入できる!
(総資産-総負債-当期純利益(損失の場合は損失額を+))×60%>1億円
飲食代の50%まで損金算入できる!
※100億円を超える場合は全額損金不算入
まとめ
持分の定めのない医療法人しか
設立できなくなって15年ほど経ちました。
順調に利益が蓄積されている持分なし医療法人は
交際費800万円規定が適用されない可能性もあります。
「基金」を「資本金又は出資金」と同視して
誤った判定をしないよう気を付けましょう!
なお、持分なし医療法人の拠出金は
本来、貸借対照表上「基金」と表記され
そこで持分の有無を判定できます。
しかし、医療に不慣れな会計事務所の場合、
「資本金」や「出資金」との記載になっている場合もあります。
よって持分の有無は必ず定款で確認するようにしましょう。