決断し責任をとれるのは経営者だけ
西條奈加さん著「隠居すごろく」を読みました。
登場人物多目なわりにごちゃごちゃしておらず読みやすかったです。
そして爽やかで癒される作品でした^_^
還暦を機に糸問屋の主人の座を降り隠居した徳兵衛。
徳兵衛の隠居先に通う心優しき孫。
孫が連れてくる貧乏な友達らとその親。
複雑な家庭環境の子供たちやその親に対し
最初は拒否反応を示す徳兵衛ですが
徐々に受入れ、最後には強い信頼関係を築く
というお話です。
商売とか経営の話ではなくて
隠居後の老人と子供たちの人情話なんですが、
所々で出てくる商売に対する徳兵衛の考え方だったり
子供たちに対する接し方が税理士として勉強になるな~
と感じる作品でした。
お金はあげないけど知恵をあげる
徳兵衛はお金がなくて困っている彼らに対しお金はあげません。
その代わりに、知恵を授けます。
原則、ヒントだけ与えて、考えることや結論を出すことはしない。
彼らが自らの頭で考え決断するようにもっていき
ひとりであるいは家族で生き抜く力を身につけさせるんです。
他人の人生ですからね。
ずっと助けてあげることはできない。
だから自らの足で立てるようにしてあげる。
直接なにかを言うわけではなくて(言う場面ももちろんありますが)
うまいこと自分の意図する方向にもっていく徳兵衛、上手だな~と感心します。
ただ、徳兵衛は徳兵衛で妻のお登勢にうまいこと操られてる部分もある。
本人まったく気付かぬうちに笑。
そこもまたおもしろい。
徳兵衛は経験豊富な経営者であり、さらに、相手が子供や若い親なので
自らの足で立てるようにもっていきそれがうまくいっています。
私みたいな若輩者が徳兵衛みたいな税理士になりたいなんて
言うのはおこがましいしなれるとも思いませんが
横の立場で助言くらいはできるはず。
具体的には、その人(経営者)のヒントになるような
情報や現状分析を伝えて経営判断に生かしてもらえるようにするってことです。
本業について決断し責任を負うのは経営者しかできませんが、
そこに至る過程においては支えにはなれるはず。
決断し責任をとれるのは自分だけ、会社の場合は経営者だけ
小説内のセリフで
情だけでは、物事は動かない。時に非情を貫いてでも、主人は店を守らねばならない。上に立つ者の宿命であり、「旦那さま」とかしずかれる代わりに、大きな責めを負うのは必然でもある。
P160
いざというとき責めを負い、客に頭を下げるのが主人の務めであるからな。
P273
というものがあります。
決断をし責任をとるのは経営者しかいません。
徳兵衛のセリフを聞くと、
顧問先の経営者の方々に対して頭の下がる思いになります。
「決断し、責任をとる。」って、
言うのは簡単ですが実行するのはべらぼうに難しく覚悟がいるものです。
決断によっては、
お客様・従業員・その家族にまで迷惑をかける恐れがありますし、
従業員が何か間違いをおかしたとき、
自分が直接関わっていなくても経営者は責任を取る必要があります。
今の勤務先の先生は、例えば顧問先から
「AにしようかBにしようか迷っている。どうしたらいいでしょう?」
と相談を受けたとき、自分の意見は伝えつつ、
最後には必ず「判断は社長にお任せします。」で締めくくります。
リスク回避の意味合いもあるとは思いますが、
決断し、それに責任を持てるのは、結局、経営者だけなんだと毎回実感します。
まとめ
税理士として独立目前だからか、
全然関係ない時代小説まで税理士に結び付けて
考えてしまい我ながらちょっと笑ってしまいました笑
税理士云々を抜きにした感想としては、
隠居(引退)を決めるのは必要なこと
(能力はどうしても衰えるので)だけど
人はいつまでたっても誰かに必要とされることで
生き生きとするもんなんだな~ということ。
読みやすく、爽やかで癒される作品でした^_^