電子帳簿保存法の「電子帳簿・電子書類」(任意)、優良は目指さなくていい
本日は電子帳簿保存制度のひとつ「電子帳簿・電子書類」(任意)についてご説明します。
2023年4月現在、唯一義務化されている「電子取引」とはベツモノです。
「電子取引」についてお知りになりたい方は「電子帳簿保存法の『電子取引』(義務)って何?」をご参照ください。
電子帳簿保存制度は3種類ある
電子帳簿保存制度は「電子帳簿・電子書類」「スキャナ保存」「電子取引」の3種類に分類され、内容が全く異なります。
簡単にまとめた図がこちらです。
図の通りですが、それぞれについて簡単に説明すると、、、
①電子帳簿・電子書類
→(原則、紙保存なんだけど)総勘定元帳・決算関係書類など会計ソフトやPCで作った帳簿書類をそのまま保存していいよ!②スキャナ保存
→(原則、紙保存なんだけど)紙でやり取りした請求書・領収書などをデータで保存してもいいよ!③電子取引
→電子でやり取りした請求書・領収書などは電子のまま保存しなきゃダメだよ!
というものです。
「電子帳簿・電子書類」はしてもしなくてもいい「任意」規定
本記事においてご紹介するのは、①電子帳簿・電子書類についてです。
3つのうち③電子取引だけは義務なんですが、①電子帳簿・電子書類と②スキャナ保存との2つは任意です。
つまり、やりたい人だけやればいい、ということです。
「電子帳簿・電子書類」とは何のこと?
「電子帳簿・電子書類」とは具体的には下記のことをいいます。
・電子帳簿・・・自己がコンピュータを使用して作成する帳簿
仕訳帳、総勘定元帳、経費帳、売上帳、仕入帳など・電子書類・・・自己がコンピュータを使用して作成する決算関係書類や取引相手に交付する書類の写し
見積書、請求書、納品書、領収書などの”控え”
「電子帳簿・電子書類」を電子保存するための要件は3つ
「電子帳簿・電子書類」を電子のまま保存する要件は3つです。
赤で囲った3点を満たせば要件はクリアします。
とっても分かりにくい言い回しなので、平易な言葉でいうと次の通りです。
【電子書類・電子帳簿】を電子保存するための3つの要件
①使用したソフトの説明書を備え付けること
②PCやプリンタ等の説明書を備え付け、データを整然・明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと
③税務署職員のダウンロードの求めがある場合にはこれに応じること
優良な電子帳簿に格上げするには+3要件
「電子帳簿・電子書類」のうち「電子帳簿」についてだけのお話です。
会計ソフトを使用していれば基本的には要件を満たしますが、より厳しい要件をクリアした帳簿に対して「優良な電子帳簿」として税務上の特典を与えています。
優良として認められるためにはプラス3つの要件があります。
その3要件とは下の赤枠部分です。
まとめると次の通りです。
優良な電子帳簿として認められるためのプラス3つの要件
①訂正削除履歴の保存
②帳簿間の相互関連性
③日付・金額・相手方による検索機能
具体的にどうしたらいいかといいますと、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の認証したシステムを選ぶのが一番です。
国税庁HPのJIIMA認証情報リストの
・電子帳簿ソフト認証リスト
・電子書類ソフト認証リスト
から確認できます。
なお、JIIMA認証を受けていないシステムは認められない、というわけではありません。
リストに載っていなくても要件を満たしていればもちろんOKです。
優良な電子帳簿の特典は「過少申告加算税5%軽減」
優良な電子帳簿を作成すると受けられる特典は2つです。
・過少申告加算税の5%軽減
・所得税の青色申告特別控除55万円のところ65万円
青色申告の65万円控除はe-taxで申告していれば適用されるので、そちらで適用済みの方が大半かと思います。
よって、優良な電子帳簿を作成することで受けられる特典は実質「過少申告加算税の5%軽減」だけとなります。
過少申告加算税とは、期限内申告をした納税額が少なかった場合に課せられる税金です。
自らミスに気付いて修正申告する場合にはかかりませんが、税務調査があって間違いが見つかり修正申告するような場合には10%ないし15%の過少申告加算税がかかります。
これが5%軽減される、ということです。
なお、こちらの特典を受けるためには税務署への届出が必要です。
「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出書(優良)」
こちらの届出書を、法定申告期限までに提出します。
まとめ
一般の電子帳簿については、会計ソフトを使っていると自然と要件を満たすでしょうから適用できる方が多いのではないでしょうか?
優良な帳簿を目指すかどうかですが、こちらは届出が必要ですしシステム導入にお金もかかるので「余力があれば」でいいのでは、と思います。
優良帳簿の範囲が令和5年度税制改正で16種類から11種類まで狭められました。
それでもすべての帳簿を対応させるのはなかなかハードルが高いと感じます。
中小企業が実践するには通常の「電子帳簿・電子書類」までで「優良な帳簿」は目指す必要はないのではと感じます。